ALONE
時刻は午後10時



場所は紙に記された町外れの小さな墓地。



朝の快晴が嘘のような冷たい雨が降る。



まるで兄貴が死んだあの日のように。



ただあの時と違うのは



今の俺には頭を冷やすのにちょうどいいってこと。




そしてこの汚れた拳の血を洗い流すのに…。



俺は美姫の墓の前にたたずむ。




そこに記された名前は




本条美姫という名前の代わりに




見たこともない漢字が羅列された戒名。




俺は静かに墓前で手を合わせ




美姫に呼びかける。






なぁ美姫








俺がしたことは正しかったのかな。







お前はあんなこと望んではいなかったかな。





ごめんな美姫。






そっちに俺が行ったら






またちゃんと謝るから





口ぐらいはきいてくれよ。



俺は合わせた両手をほどき


雨に濡れる墓石に刻まれた美姫の戒名を



雫を拭き取るように優しく指でなぞり



その場を去った。
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