ALONE
シエスタ
約束の午後6時まであと1時間。


鏡の前に立つ俺。







『豚に真珠』




昔俺が中学時代

ロクに学校にも行かないのに

学ランを着ていた俺にフランス人のじいさんが言った言葉だが



その心情が今理解出来る。


どー考えても…



金髪に青い眼球の俺には



兄貴が着ていたヴェルサーチのスーツは似合わなかった。


まさにスーツに『着られてる』俺。



豚とまでは言わないが



さしずめ今の俺は歌舞伎町の売れないホストだろう。


これからこの姿でFXに乗る俺を想像したらゾッとした。


サラリーマンが50ccのスクーターに乗ってる姿の方がまだいくぶんマシ。




…今はあれこれ考えてる場合じゃなかった。


俺は支度を済ませて


玄関で埃をかぶったリーガルの靴を履く。


普段会話を交わさないじいさんが廊下に出て来て


玄関の俺を見ると


珍しく口を開いた。



『…こすぷれってやつか…』








じいさんの手には『萌える聖地アキバ』と書かれた


一冊の本が握られていた。



じいさん…




あなたは日本の文化を誤解しています。
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