ALONE
時刻は5時半。


俺は繁華街付近のコンビニにバイクを停め


『シエスタ』へ歩いて向かった。


場所に大体の見当がつく。



この繁華街にはバーばかりが立ち並ぶ狭い抜け道があるのだが…


そこはどのバーも開店する7時を回らなければ誰も寄り付かない薄気味の悪い道。


俺はその一角にポルトガル語で『sesta』と書かれた店を見つけた。



迷いや恐れはない。


そんなものは日常生活に全て置いてきた。



俺がこれから開けるこの扉は…




非日常生活への入口。



店に入る。




開店前で積み上げられたテーブルや椅子。


薄明かりのホール。


その中心に三つの椅子が三角形に配置されている。




一人そこに座っている男がいた。




シュウジではない。




歳はまだ若そうだ。



ざっと見積もって30代後半。



彫りが深く…



そこそこ長い黒髪を整髪料でオールバックにした


金のロレックスを右腕に2本巻いた男。



間違いなく『そっち系』の男。




男は俺を飢えた肉食獣のような目つきで睨みながら



口を開く。
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