ALONE
『…いらっしゃい。』



低く地を這うような声。



その時俺の本能が働いた。


コイツは…




怒らせてはいけない人間。



男は俺にアゴだけで『そこに座れ』という意味で指示する。



俺が椅子に座ると



男は俺に視線を向けることなく聞いた



というか…



実際はその時横目で見ていたのかもしれないが


ただ単に俺が男を見れなかった。


見たくなかった。


今にも食われるんじゃないかって気分になったから。


『…名前は?』


男はジッポをキンと高い音を鳴らせてタバコに火をつけた。


『榊ジン…です』


男はたたみかける。



『…歳は?』




『17…です。』


男はゆっくりと煙を吐く。

『…若ぇな。』







頼む。


シュウジ早く来てくれ。


俺はこの空気に耐えられそうにない。










珍しくその時俺の願いは通じたらしい。
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