ALONE
『全く手掛かりがないんや。』





ぶったまげた。





『は…!?

お前あれだけ偉そうに勝算あるツラしてたろ!?』


『まぁ聞け。手掛かりがないなら作ればえぇ話や。』

『作る?材料も何もないゼロの状態からか?』


『いやゼロやない。

ええか?

お前の兄貴はもうおらん。

犯人もわからん。

目撃者もお前だけ。

けど人の記憶はアテにならん。

10年も経てばなおさらやろ。』




『…それのどこがゼロじゃないんだ?』


シュウジはにやりと笑う。


『頭働かせてみ。

死人に口なしや。

じゃぁ他に何が事件を語ってくれる?』



その言葉を聞いて俺の頭の中にある言葉が浮かんだ。





『……遺留品?』



シュウジは笑いながら音のない拍手を2、3度した。


『俺の目に狂いはなかったな。お前をパートナーにして正解やった。』


しかし俺は言った。


『でもさ、あの日兄貴が身につけてた物は鑑識が持ってって調べたけど…犯人に繋がるような物は何もなかった。』


シュウジは立ち上がる。


『誰が身につけてる物言うた?』
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