ALONE
『…そうや。つーか…そっちの方が可能性高いわ。コレは職人技やで。人が使った形跡がない。買ってきてほぼそのままの状態や。』






その時






俺の中である記憶が甦る。



兄貴の葬式が終わった一週間後



ある男が玄関に立っている。



出迎えたのはじぃさん。



俺はじぃさんの後ろでその男を見ていた。




兄貴の高校の時の同級生だと言う



名前は確か…



安西と名乗った。



グレーのスーツ姿で予告もなしに現れた安西は



仕事で葬式に出れなかったと言い



線香だけでもあげたいと言った。



じぃさんはそいつを家に上げ



そのまま仏壇のある和室へ。



線香をあげると…



兄貴の昔話をじぃさんに始めた。



兄貴は正義感に強く、みんなのリーダー的存在で、みんなから好かれていて…



なんて話を延々と続けた。



俺はまだガキだったが



その男に何か不信感を抱いていた。



そしてひとしきり兄貴の昔話を話すと…



涙目のじぃさんにこう言ったんだ。






『ルウイ君の部屋を拝見してもよろしいでしょうか?』
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