ALONE
『…ジン…多分それここの鍵で間違いないで。コレ見てみ。』




兄貴が残した鍵と全く同じだった。



違いがあるとすればそれは12番の刻印。



『…こりゃ多分



31番以降は撤去されとるな。


ジン、お前が使ってた頃はあったんか?』



…曖昧だった。


俺達は物を普段物として見ているだろうか?


例えば道路の信号を見て『信号』そのものについて語る奴はいない。


『あの赤い色はLEDによる独特の赤で…』



とか



『あの柱の部分の色合いは実に控えめで信号の色を引き立たせ…』




とか言う奴は多少イッちまってる。


俺等にとって信号とは


赤は止まれで


青は進め


その『意味』しか持たない。




言いたいことがわかるだろうか?



俺はコインロッカーを物としてではなく



色んな物が集まって出来上がる



駅構内の『景色』の断片としてしか見ていなかった。



しかしその景色も脳裏には曖昧に映る。



このATMは俺が使っていたころからあった気もするし…




なかった気もする。



『…わからない。』
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