ALONE
俺は机を蹴り坂戸の胸倉を掴んだ。


『言えよ』


『わかったわかった!言うから!だから落ち着いて!』


坂戸から手を離し


机を戻し


坂戸を空き教室に連れて行った。


『で?』


『いや…ホントにこれ噂なんだけど…』


『前置きが長ぇよ』


『ゴメン…あのさ、トオル先輩の…好きだった人…いや恋人だったのかな、その人が学校辞めさせられて…それでブチ切れちゃったらしいんだ。』



…初耳だ。



あの笑顔からトオル先輩がキレるなんて想像がつかない。


『なんでその女は退学になったわけ?』


『噂が広がったから…』


『なんの?』


『トオル先輩とデキてるって』


『は?なんだそれ?別にデキてたっていいだろ。』


『マズかったんだよ』


『何が?』


『その女…教師だったんだ』



『…!?』



『しかも…結婚してた』



言葉を失うというのは


こんな感じなのかな。



坂戸を教室に返した後も



俺はしばらく放心状態だった。
< 18 / 306 >

この作品をシェア

pagetop