ALONE
その日から一週間と経たないうちに二人の関係は噂になった。


二人は意識してお互い話すコトを避けたが


逆にそれが噂が真実であることを周りに印象づけた。


先輩の出場する大会2週間前。


まだ噂は校内に留まっていたが


事態は悪い方向へ向かう。


まず学校の教職員会議でこの噂が議題にあげられ


次に澤井裕子の夫がそれを知った。


なぜこうも男は独占欲が強いのか。


澤井裕子の夫は同じ屋根の下で暮らしていた妻に


今まで全く関心を示さなかったにも関わらず


失うとわかった途端手の平を返すようにしがみつく。


『別れたい』と切り出すと


夫は澤井裕子に手をあげた。


後日腫れた頬を大きなガーゼで隠す澤井裕子を見た先輩は


『俺が殺してやる』と怒り狂ったが


『お願いだからやめて』と泣きながらしがみつく愛しい人の手を


振り払うことが出来なかった。


そして澤井裕子は程なくして学校を去る。
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