ALONE
大会当日


会場のパンフレットには先輩の写真と記事が見開き2ページに渡り掲載され


男子200mの競技が始まる正午には


会場は超満員になっていた。



しかしそこに先輩の姿はない。



会場を探し回る顧問代行と部員達。


選手が召集される5分前



先輩は現れた。


何も話さない。


何も見ていない。


先輩が醸し出すその雰囲気は怒りと悲しみを混同させたような感じで


誰もがその姿に息を飲み


誰も話しかけることは出来なかった。



黙々と着替える先輩の背中越しに


顧問代行はためらいがちに言った。


『が…頑張ってくれよ』



長い沈黙





着替え終わると先輩は小さな声で言った。


悲しい笑みとともに。






『誰のために?』
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