ALONE
この場にその姿はなくとも



ヨシアキは全てを見透かしていた。




しばしの沈黙。




『…わかりました。』




【何?来たくない?】




『いやそうゆうわけじゃ…!

ただ…

ヨシアキさんには敵わねぇなぁ…って。』




【ハハ♪フツーの人間でいたいなら俺等みたいな奴らと対等でいたいなんて思わなくていいよ。落ち込む必要はないさ。じゃぁ…また明日な。】




『…はい。失礼します。』



静かに携帯を閉じる。




確かに…




フツーに生きていきたければ



ヨシアキの言う通り闇を住み処とする人間達と対等でいる必要はないのかもしれない。





…ただ




今の俺には不安が募る。




今俺が立っている土俵の上のこの勝負を





『勝者』という形で終えたいのであれば




対等であるどころかその一つ上の位置へと自分を高めなければいけないのではないか。




闘争心の空回りは死を招く。




近い将来フツーの暮らしに戻れたとして…




なんて淡い期待を抱いてはいけない。




今この瞬間を




勝つために。




ただただ今この瞬間を




生きるために。




俺は更なる高みへ昇る必要がある。
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