ALONE
兄貴ゆずりのFXの車体の右半分は傷だらけ。


俺のヴィンテージのジーパンも大きく裂け


右足は打撲と出血。


ヘルメットを脱ぎ捨て


俺は女にブチ切れようとした。


しかしこの女は俺より先に吠える。



『なんでよけんのよ!』



ア然とした…



『なんで引き殺さないの!?信じらんない!!』



この女…



わざと飛び出してきやがったのか…。


急に怒りが萎えた。


『死にたいなら他あたれよ。俺はこの歳で人殺しなんてゴメンだね。』


女は急に泣き始めた。


『…なんなんだお前。』


俺はもうどうでもよくなり


倒れたバイクを引き起こした。


エンジンはかかる。


でもこれは修理に出さなきゃマズいな。


バイクにまたがろうとしたその時


女が俺を後ろから羽交い締めにした。


『…なんだよ』





『ねぇ…あたしのこと抱いてよ。』
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