ALONE
本条 美姫


それが彼女の名前。


彼女は大財閥の一人娘としてこの世に生を受けた。


物心ついた時には


彼女は20畳はある大きな部屋で


一人で熊のぬいぐるみと遊んでいた。


寂しくはなかった。


それが当たり前だと思っていたし、


夜には必ず新しいおもちゃとケーキを持って父親が会いに来てくれるから。


本条美姫は幼稚園にも行けず

もうすぐ7歳になろうという頃でも小学校にすら行けなかった。

勉強は専属の家庭教師が朝から晩まで付きっきりで、

彼女はある日

部屋に来た父親に当たり前のことを言った。


『あたしもランドセルが背負いたい』


それを聞いた父親は


鬼の形相を浮かべ


彼女を殴りつけた。


何が起こったのだろう?


彼女はわけもわからず泣いた。


殴られた顔が痛いからじゃない。


優しい優しいお父さんに嫌われちゃうと思ったから。

『お父さんごめんなさい。お願いだからみきをきらいにならないで。』
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