ALONE
そして今年の夏


彼女は15歳になった。


思春期を迎えた彼女にとって

この縛られた日常は耐え難い苦痛となっていた。


彼女は外界の日常を


自分の現状の異常さを


ブラウン管を通して知る。


もう堪えられない。


彼女はじぃじと幼い頃から呼んでいた付き人の目を盗み


本条家という檻から逃げ出した。


しかし彼女を待ち受けていたのは自由ではなく



疎外感だった。


足早に過ぎ去る人々


誰も私を見ていないの?


私は本当に生きているの?





孤独




誰か私を見て


誰か私を知って



誰か私を…







愛して下さい。





自由を信じて飛び出したはずの檻の外は


檻の中とさほど変わらなかった。


ならいっそ消えてしまいたい。


誰もいない延々と続く夜の歩道



彼女は俺と出会った。


そして彼女は父親以外の男に初めて抱かれた。


恐怖心はなかった。


皮肉にも父親にされた忌まわしき出来事であったはずの行為をすることが





今自分が生きていると感じられる唯一の方法だったから。
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