ALONE
『だから俺等は群れて単車走らせるなんて暇もなけりゃハナからそんな気もないねん。俺等は俺等の利益のためにやった。ただそれだけのことや。』

俺は聞く。

『利益?そんなに職業バラけてんのに目的意識なんか統一されるか?』

シュウジはアイスコーヒーの氷をバリバリ噛みながら答える。

『これが統一されるんやなぁ見事に。』

シュウジは空のコップをテーブルに置き

身を乗り出す。

『いいか?まずウチのメンツの弁護士。そいつはここの町じゃ有名なセンセイのお抱えなんや。』

一気に話の内容がグレーに染まる。

『センセイって…』

『察しの通り政治家や。そのセンセイの要望でな、この町の暴走族追放は今までどの候補者も見てみぬふりしてきた課題やったんや。そこで他の候補者を出し抜く利点としてそこに目をつけた。』

合点がいく。

その政治家が当選したのは去年の春。

たしかキャッチフレーズは『住民が住みやすいクリーンな町』だった。

選挙運動中の発言は大言壮語。

さも実現しそうに発言するも

中身はまるで夢物語。

しかしそれで十分。

人は夢物語が大好きだ。

当選してしまえばこちらのもの。
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