ALONE
『あの子がもう一つの理由?』

シュウジは苦笑いをする。

『そうなんや。なぁジン…おしりかじり虫って知っとるか?』

…?

今思えば俺は爆発的に見当外れな解答をした。

『いや…そんなふざけた名前の虫は知らない。』

シュウジは俺の肩をバンバン叩きながら笑う。

『ちゃうちゃう。歌や歌。それをな、去年ウチの妹のクラスが運動会で踊ってん。』

残念ながら俺の中の子供の歌はだんご三兄弟で止まってる。

イメージは沸かなかったがそうゆう類なのだろう。

『けどな、毎年開かれてた運動会が去年は中止の話で進んでたんや。』

シュウジはずっとリボンをつけた女の子を微笑ましく見ている。

まるで親が我が子を見守るかのように。

『この辺は夜走り回っとる族の連中の昼間のたまり場になっとった。園児の親達は心配やったんやろな。無事運動会が行えるのか。』

シュウジは俯く。

『でもな、アイツ…家でずっと踊るんよ。飯の時も、寝る前も…俺の前でずっと練習するんよ。それ見とったらなんかたまらんくなってな…。』
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