ALONE
『あんなに一生懸命練習して…あんなに楽しみにしとって…。そんなアイツを俺はガッカリさせたくなかったんや。』



シュウジのその表情は悲哀に満ちていた。



ホントは暴力団幹部や弁護士の話なんかシュウジには関係なかったんだろう。



シュウジはただ




あの小さな女の子が泣くところを見たくなかった。



シュウジにとって最大の利益とはただそれだけだったんだ。




シュウジは俺に黙ってヘルメットを手渡すと


『帰ろか』


と言い


俺の家へとバイクを走らせた。


シュウジの背中を見て俺は思った。


もう出会った時のような不信感はない。

こいつは口では残酷なことを言うが

悪い人間じゃないんだ。

大人と子供の世界を熟知し

だからこそ両方の世界の人間から重宝され


信頼を勝ち得てる。


そんな奴だ。


そしてたった一人の妹のためなら


全てを賭ける事が出来る。


心優しき



ニセ関西人。


ただまだ一つわからないことがある。

俺に言ったあの言葉…
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