夏の日の想い出
そういえば昨日、行く場所決まってるって言ってたよね……。
どこにいるのかな?
もしあたしたちが下校するときにレナと会ったりなんかしたら、絶対大騒ぎになるに決まってる。
まさかレナを見ただけで二年後のあたしだなんて思う人はいないと思うけど……。
「でも、次自学でしょ? 気楽だね!」
「あ、そうだっけ?」
さっきからずっとレナのことを考えてて、そんなことすっかり忘れてた。
「ちょっと、麗夏らしくないじゃん!」
そんな真弥の声を無視して、あたしは窓の外を眺めた。
「レナ……」
「レナ?」
怪訝そうな表情で真弥に聞き返されて、自分が思わず声を出していたことに気づいた。
「ごめん、なんでもな……」
…………なに?
心臓の鼓動が、どんどん早くなっていく。
―ヒュンッ……
まただ。あの風。
なぜか激しい胸騒ぎがする。
………行かなきゃ。
「ちょっと行ってくる!」
「はっ、どこに!?」
気がつけばあたしは、教室を出て走り出していた。
どこにいるかなんて分からない。
外は三十度をこえていて、セミの鳴き声しか聞こえない。
それでも、あたしは必死に走っていた。
なんの根拠もないけど、なんだか行かなきゃいけない気がしたんだ。