夏の日の想い出
全く状況がつかめない私に、目の前の“麗夏”は少し小さなため息をついた。
「確かに、信じらんないよね。こんな話。
でも、うそでもいいから今はとりあえず信じてほしい」
信じてほしい。……って、そんなこと言われても……
「だってあたし……ほんとに全くわかんない……」
「ねえ……あんた、あたしに何を伝えに来たの?」
この人は、あたしに伝えたいことがあってわざわざ未来から来た。
そこまではギリギリ理解できたけど、だったらその、“伝えたいこと”ってなに……?
「それは…………」
レナは、一向に話し出そうとしない。
ずっとうつむいたままのレナを見ている間、セミの声だけが神社に鳴り響いていた。
汗が、ポタリと落ちる。
それでもあたしは汗をぬぐわずに、レナから一瞬も目を離さなかった。
「今は言えない………」
うつむいたまま静かにそう言ったレナ。
その時、あたしはようやくレナから視線を外した。
「………どうして?」
「どうしても。…………ごめんね」
なんだか、自分に謝られると変な感じがする。
「じゃあ、ひとつ聞いていい?」
「うん」
「本当に未来から来たの?」
あたしのまっすぐな視線に、今度はレナもしっかりあたしの目を見て答えた。
「あたしは、未来から来たよ」