雨の恋路
「じゃあ帰るね」
「送ってくよ」
「大丈夫、もう平気!あなたのおかげで」
「……そっか」
そう言った彼の笑顔は
とても綺麗だった。
「じゃっ」
「…あぁ」
小さく手を振り、
家路を歩き出す。
あたしの姿が見えなくなったのか、後ろで小さくバタン―とドアが閉まる音が聞こえた。
その音が鳴った後、あたしは振り返って小さくお辞儀をした。
確かに驚いたし、
すごく怖かった。
だけど、何故か心は
晴れ渡っている。
外では既に雨が上がっていて、虹が出ていた。
その虹は一点の曇りもなく綺麗で、
彼の笑顔に、とてもよく似ていた。
その虹を見て「ありがとう」と呟くと、あたしは家までの道のりを力強く歩き出した。