雨の恋路


「もういい……」




あたしはそっと光から手を離した。






「ごめん……急に。あたし帰るね」





そう言って光に笑顔を見せる。
涙を拭いてそのまま帰ろうとした。








「……え?」




左手に違和感を感じ、そっと振り返る。



あたしの左手首には、
ガッチリと光の左手があった。








「帰れなんて、一言も言ってないけど」






まっすぐ目を見て言う光に、
止めていた涙が溢れ出す。





そして、光はそのまま自分の部屋へとあたしを連れて行った。



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