雨の恋路


「咲希さんがね……今日、来たの」



咲希が……?




「来たって何処に?」




「校門の前。あたしが出た時に『今日は雨美ちゃんに用があるの』って……」




「雨美に?……咲希は何て言ったんだ?」




俺がそう言った瞬間、
震えだす雨美の手。




その手に……
そっと自分の手を重ねる。






「大丈夫。ゆっくりで良いから」



コクンと頷く雨美を、
不謹慎だが……愛しいと思った。



今すぐ……俺のものにしたい。

そんなこと、今は許されないけれど。





雨美……?
もし次あんなこと言ったら……俺は我慢しないからな。





「咲希さんに…喫茶店に連れていかれて、光のこと聞かれたの」





「俺?」



「…うん」



< 164 / 278 >

この作品をシェア

pagetop