雨の恋路


「咲希……さん」



あたしの言葉に、光が靴を履いて出て来たのが分かった。



「咲希……どうして…?」



光の言葉を無視し、咲希さんはあたしの顔をマジマジと見ながら話し出す。



「朝帰りなんて……ずいぶん余裕じゃない」



心なしか、咲希さんの声が震えているように感じた。




「余裕とか、そんなんじゃ……ないです」


「へー、何?とうとう光に抱かれちゃったの?」



思わず顔を赤らめ、
言葉を詰まらす。



「そっか~!やっとなんだ」



そう言ってクスクスと笑い出す咲希さん。




「どうだった?光は優しいでしょ?」


「っ…-!」


「咲希!」




光が叫び、あたしの前へ躍り出た。



「何がしたいんだ!」


「何がって?別に本当のことを伝えただけじゃない」




「何が悪いの?」とでも言う様に、咲希さんは首を傾げる。

< 193 / 278 >

この作品をシェア

pagetop