雨の恋路
「いや、俺の方が謝るべきだ。光…悪かったな」
「兄貴……」
「ほら、雨美ちゃんを送ってやれ。咲希のことは……気にするな」
りっくんがそう言うと、光は急いであたしに近付き手を差し伸べる。
「大丈夫か?雨美」
心配そうな光の顔。
あたしはニコッと微笑むと「大丈夫」と言って光の手をとった。
「咲希、一先ず家に入れ」
「……でも、」
「とにかく入れ」
咲希さんはりっくんに手を引かれ、
そのまま家へと入って行った。
「あんな兄貴、初めて見た」
少し驚いたように玄関の扉を見つめそう呟く。
確かに……りっくんはいつもちゃらけてて、年上って風には見えなかったのに。
今のりっくんはすっごく大人っぽくて、男らしい。
「行くか」
ふいに発せられた声に顔をあげると、光が見つめていた。
「帰ろうぜ」
「うん、そうだね」
差し出された手を握り、
家路を歩き出した。