雨の恋路
それから、どうやって家に帰ったのかは覚えていない。
いつの間にか目の前には母がいて、大声で泣いていた。
すぐさま産婦人科へ連れていかれ経口避妊薬、つまりピルを、診断のもと受け取った。
「良い、雨美。忘れずに服用するのよ!絶対に……忘れ、ないでね」
「…………。」
母は、声を押し殺して泣いていた。
あたしが泣いていないからだと……思う。
違うよ、お母さん。
泣きたいのに、
涙が出ないの。
どうしてかな?
もう泣く力すら、
無いのかもしれない。