雨の恋路
「どうしたんだよ!?雨美!」
「いや!あたしは汚いの!触らないで!」
「汚いって……。まさか…―!」
何でだろう。
忘れたはずじゃなかった?
たった一言で甦る悪魔の記憶。
一瞬で奪われたあたしの幸せ。
枯れたと思った涙は、
こうも容易く溢れ出す。
いつのまにか感じた暖かい温もりに、あたしはすがる様に抱きついた。
「ごめ、んなさい…っ!ヒッ……ごめ…っ」
「雨美……」
大きく広い肩は、徐々にあたしの涙で濡れてゆく。
誰にも話さないと決めたのに……。
結局は誰かにすがってしまった。
あたしは弱い人間なのかな?
それとも、
少しくらいなら許される?
圭吾の胸が温かくて、安心出来て……あたしは声が枯れるまで泣き続けた。