雨の恋路
「なぁに?」
ニコッと笑う雨美に、
本当の笑顔はない。
無理して笑ってるのがバレバレだ。
「俺じゃ……」
『俺じゃ駄目か?』
その言葉が出ては飲み込み。
飲み込めば再び出てくる。
本当に……言っても良いのか?
雨美を守りたい、傍にいたい。
俺が……雨美の支えになりたい。
その気持ちは嘘じゃない。
だけど…-
どうしても引っ掛かる。
城田先輩の……存在―
「フフッ、どうしたの圭吾?何か変だよ?」
振り返りゆっくりと俺に近付く雨美。
緊張でそこから動けない俺。
そして残り数歩の所で、
ピタッと雨美の足が止まった。
……雨美?
雨美の瞳は大きく見開き、
そして次第に震えだす。
雨美の視線の先は……俺じゃない。俺の……後ろ?
バッ後ろを振り返った瞬間、
黒いワゴン車が勢い良く通り抜けた。