雨の恋路
―――――――
「落ち着いた……か?」
「……うん。ごめんね圭吾」
「謝んなよ」
雨美からそっと体を離す。
まだ乾ききっていない涙が、
頬で悲しく光っていた。
「なぁ、どうしたんだ?」
「車が……通ったでしょ?」
「車?…あぁ……」
あの時の黒いワゴン車か。
「あの車がね、ソックリだったの」
「ソックリ?」
「そう、ソックリ。だから……かな?思い出しちゃって……」
再び震え出した雨美の体と今の言葉から……やっと理解した。
「雨美、ごめん!もう言わなくて良いから…!」
「……うん」
「ありがとう」
そう小さく呟いた雨美の言葉は、俺の胸を強く締め付けた。