雨の恋路
その声に反応してか、
ゆっくりと振り返る光。
そのたった一瞬の時間が、
あたしにとっては凄く長かった。
目の前には光。
逸らすことなく
重なりあう視線。
だけど、それはほんの束の間。
パッと先に目を逸らしたのは光で、その小さな行動が酷くあたしの胸を苦しめた。
「光~!一緒に行こう?」
後ろから聞こえる甘い声に、
光が俯いていた顔を上げる。
でもその瞳に、あたしが映ることはなかった。
まるで、そこにあたしがいないかのように通り過ぎようとする光。
後ろでは甘い声が
何度も光を呼ぶ。
気付かされた……現実。
もう、遅い。
あたしと光は終わってた。
光ともう一度やり直せるって、あたし期待してた。
バカみたい。
本当、大バカ者だ。
その瞬間、世界がグラッと揺らいだ。
あれ?おかしいな?
足に上手く、
力が入らない。
気持ち……悪い…。
どうしたんだろう?
駄目、意識が……
その刹那、一気にあたしの視界が反転し、目の前には地面が広がった。