雨の恋路
ダメっ…
光が行っちゃう!
「待ってっ…!」
教室を出ようとする光を、
反射的に呼び止めた。
光は振り返らず足を止め、次に続くあたしの言葉を待っているようだった。
きっとこれは圭吾が、あたしのためにくれた最後のチャンス……
『自分の気持ち、正直にな』
これはあたしが圭吾にじゃない。
あたしが、光に……だったんだ。
ありがとう、圭吾。
圭吾がくれたこのチャンス、
絶対無駄にしない。
勇気でたよ…?
あたし、頑張るから……
光に聞こえないよう
ゆっくり息を吐く。
光の背中を見て、
口を開いた。
「今日……運んでくれたの光だよね?」
「…………。」
「ありがとう」
光からの返事はない。
それでもあたしは話し続けた。