雨の恋路

あたしには分かる。
美穂さんは本気で光のこと…



「あ~あ、あたしってモテるんだからね。1人の男を相手にするなんてバッカみたい。……じゃあね」



そう言ってそのまま靴を履き
帰っていく美穂さん。



「あ、」



そんな美穂さんが急に何かを
思い出したように振り返る。




「元カノさん。良いこと教えてあげるわ」



「え…?」



「あたし、キスしちゃってるから」



「おいっ!」



咄嗟に光があたしを背に隠す。
その行動にクスクス笑う美穂さん。



……分かってるよ、
そんなこと。



「でもね、それ以上はないよ」



「え?」



「キスだって、あたしが無理矢理した1回だけ。それにね、光ってあたしに対して『好き』って言葉、1回もくれたことなかったから」



「本当に、貴方のことが好きなのよ」そう笑って去って行った美穂さんは、凄く綺麗だった。


勝手に嫌になってたあたしが、
恥ずかしくなるくらいに……

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