雨の恋路
「ね、光……?」
「ん。分かってる」
「……そっか」
美穂さんは本気で光が好きだった。それは光も分かってる。
少し気まずい沈黙の中、
急に光に腕を引っ張られる。
「…っえ!?」
「俺と雨美の話はまだ終わってない。靴、履き替えてきて」
「う、うん…!」
光の有無を言わせない鋭い瞳に、あたしはただ、頷くしかなかった。
靴を履き替え外に出ると、先に待っていた光に再び腕を掴まれる。
本当に、何処に行く気なの?
行き先も何も教えてくれない光に、
どうしようもない不安が圧し掛かる。
そんな中、ふいに体育館の方から視線を感じ、反射的にそこへ目を向ける。
…圭吾……-!
そこにいたのは、圭吾だった。
悲しそうに微笑む圭吾は、あたしの視線に気付くとその表情を一変し、満面の笑みに変える。そして、あたしに向かって大きく手を振った。
そんな圭吾に、『ありがとう』の気持ちを込めて、あたしも笑顔で返した。
校門をくぐり、
圭吾が見えなくなる。
その後の圭吾の表情が
どんなだったか……。
あたしが知ることはなかった。