雨の恋路
そっと唇が離れたころには、
お互い涙で顔がグチャグチャだった。
「「ぷっ…」」
「光、凄い顔してる」
「雨美だって」
光が、目の前にいる。
あたしの名前を呼んでいる。
あたしを見て、笑ってる。
それだけで良い。
それだけで良いの。
もう何も望まないから。
だから…光だけは…失いたくない。
「っかる…?」
「ん?」
「眠た…い…」
「…寝て良いよ」
「起きたら…光がいないかもしれない」
「俺はずっと雨美の傍にいるよ」
「…夢かもしれない」
「じゃあ雨美が起きた時、目の前にいる。約束だ」
「本当?」
「俺は嘘をつかない」
「……そっ…か…」
優しい笑顔に安心して
ゆっくりと目を閉じる。
『愛してる』
そう微かに聞こえたけど、
あたしの意識は消えていった…―