ロストマーブルズ
「そのお兄ちゃん、とても優しかった。私、風貌がこんなんでしょ。同じ年頃の女の子って目ざとくそういうところ突付くんだよね。それで友達いなかったから、お兄ちゃんが仲良くしてくれてすごく嬉しかった」

 ジョーイの頭の中ではいつしか自分とアスカに置き換えて聞いていた。
 アスカと過ごした時間が映像となって目の前に現れていた。

「だけどそのお兄ちゃん、いなくなっちゃった。自分でも何が起こったかよく覚えてないけど、気がついたとき自分は病院にいたの。ミイラみたいに包帯ぐるぐる巻きで。後で聞いたら、そのとき建物に小型飛行機が墜落して、家がドーンって爆発したみたいに焼け焦げたんだって」

 ジョーイは眉間に皺を寄せた。
 何かが被る。
「お兄ちゃんもその時私の側にいたはずなんだけど、それ以来姿を見ることはなかった。子供心ながらとてもショックで一時期話すこともできなくて、その間に英語も忘れちゃった」

「あのさ、それってどこで起こったんだ?」

「アメリカ」

「えっ」

「私のお父さん、日本人だけど留学していて、そこでお母さんに出会ったの。最初はアメリカで住んでいたんだけど、暫くして日本に移住してきたの。お陰で日本語はなんとかしゃべれるようになったけど、英語はすっかり抜けてしまった。だけど、私が日本人離れした顔だから、それだけで英語が喋れて当たり前って思われて、それで話せないと分かると、馬鹿にされたりした。また欧米の顔でもないでしょ。なんか蔑んで見られたり」

 ジョーイはまたこんがらがってきた。
 リルの話がところどころ自分の過去と重なる。
 アメリカのどの州にいたのか聞こうとしたが、リルはまだ話し続けていた。
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