ロストマーブルズ
「(FBI…… ガイ・ダルビー?)」

「(おっと、Guyと綴るが、読み方はギーだ。ギー・ダルビー、よろしくな)」

「(FBIが日本で何を?)」

「(おや、この状況でまず、なぜ自分に関係があるのだろうと思わないんだ?)」

「(俺は悪いことなど何もしていない。FBIに声を掛けられても自分のことに関係しているなどと全く思えない)」

「(まあ、いいんだけどね。そのうちわかることだから。ところで、最近誰かから連絡なかったかな?)」

「(一体何がしたいんですか。あんたのこともよく知りもしないのに、俺には答える義務はない)」

「(一筋縄ではいかないと思ってたけど、君から情報を得るのはやはり困難だ。君は何も知らなさ過ぎる。知ろうともしないけどね。だけど少しは知っておいた方がいいんじゃないかい? まあ、私もお節介だとは分かってるんだけど、君を見てたらイライラしてきてね)」

「(一体、何が言いたい。回りくどく真相をぼやかしたことを言われてもさっぱり理解できる訳がないだろうが)」

「(はいはい、すみませんね。私もはっきりと君に言ってやりたいんだが、上からの命令でそれができない。だけどヒントをやろう。それで君が勝手に気づけば、私は直接言ったことにはならない)」

 ギーはポケットから小さな粒を取り出し、それを手のひらに転がしながらジョーイに差し出した。

「(なんだよ、これ。ただの大豆じゃないか)」

「(いいからいいから、これが真相なんだ。ほら受け取れ)」

 ジョーイは近くで見てやろうと挑むように受け取った。

「(それじゃ今日のところは、これで失礼する。そうそう、サクラは今いないんだったな。真相を知るチャンスかもな)」

「(おいっ、どうして母さんのことを)」

 ギーはサングラスをまた掛けると、悪意のある笑みを片方の口元に込めて吊り上げた。

 ジョーイが引き止めても振り返ることなく去っていった。
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