ロストマーブルズ
 追いかけて問いただしても無理だと思うと、ジョーイは後姿を睨むことでしか気持ちを処理できなかった。

 手のひらの一粒の大豆をぎゅっと握り締め、地面を蹴るように踵を返して、ジョーイは家路に向かった。

 一体、この大豆は何を意味しているのか。
 ギーの目的は何なのだろう。

 指で大豆をつまみ、気を取られていると、ぼやけた視界の中で大型犬を連れた人とすれ違った。
 ジョーイははっとして振り向くが、キノじゃないと分かると大きなため息が出た。

 ノンストップでねじ込まれるように何かが迫ってくる。

 それはキノが転がしたビー玉から次々に連鎖反応を起こすように作動し始め、不思議な事件や事柄がびっくり箱を開けたように登場する。

 まるで自分がお遊びに仕掛けられたピタゴラ装置の転がる玉のような気分だった。

 そのきっかけを最初に作ったキノは一体何者なんだ。
 本当にハリウッド女優なのだろうか。

 ジョーイは思い立ったように方向を変えると、足は本屋を目指していた。

 雑誌コーナーを目指して映画やハリウッドスターのものはないかと探すが、間違ってアダルト雑誌が目に入るとジョーイの体に電流が走った。

 そんな時不意に周りの人たちと目が合うと気恥ずかしい。
 だが、慌てて去るのも、じっとその場にいるのもどちらも嫌だった。

 そのままカニ歩きになりながら、ゆっくりずれていると、やっと映画雑誌を見つけた。

 手にとってみたが、付録がついてるのか紐で閉じられて中の様子が見られない。

 表紙にはミラ・カールトンという名前も載っていないところを見ると、まだ日本では知られてないように思えた。

 仕方なく諦めて、本屋を出ようと思ったが、今度は大豆のことが気になって、何か関連する本はないだろうかと、その辺を歩き回った。

 料理本のところで、ヘルシー大豆料理特集というのが目に入ったが、ぱらぱら見ても食べ方くらいしか載ってない。

 分からないことだらけだと、ジョーイは不満な顔つきになりながら、何も買わずに本屋を後にした。

 ジョーイが去ったその直後、本屋の中で、ジョーイが手にした本を峻厳な目で見ていた者がいた。

 同じように手に取り、喫緊の問題のように捉えていた。
 それは前日もスーパーでジョーイを陰から見ていた男だった。
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