ロストマーブルズ

「(なんだ、お前も桜見に来てたのか)」
「(なんだよ、その偶然会ったような言い方は。ギーがここに来るように仕向けたんじゃないのか)」

 ふんと鼻で笑い、意地の悪さが出ているニヤついたそのギーの顔は、全てを物語っていた。
 
 悪意のあるその態度が悪者に見え、FBIという立場で何をしようとしているのか、全くつかめない。
 ジョーイは得体の知れない恐れを感じ取り、喉に声がつかえて、何も言えなかった。

 ギーはその沈黙の中、視線をジョーイの隣に移すと、舐めるような目つきでリルをじろじろと見渡した。

「(彼女か?)」

「(違う)」

「(別に照れなくてもいいんだぞ。まあ、そんなことはどうでもいいがな)」

「(彼女とは偶然ここで会っただけだ。誤解するな)」

「(ほー、偶然ここで会った…… か。本当にそうなのか?)」

「(どういう意味だ? それにもう一つ聞きたいことがある。雑誌をある女の子から貰った。あれはお前が仕掛けたことなのか?)」

「(さあ、なんのことだか)」

「(じゃあ、どうして俺は今ここに居てお前と顔を合わしているんだ? それにヒントをくれるんじゃなかったのか)」

「(ああそうだったな。しかし少し計画が狂っちまってな、それどころじゃなくなった。とにかくその話はまた今度だ)」

 ギーは踵を返して去っていく。

「(おい、待てよ)」

 ジョーイは追いかけようとしたが、リルが力強くジョーイの腕を引っ張った。
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