ロストマーブルズ
 それは丸いものだったので、コロコロと四方八方に転がっていく。

 女の子はベンチから立ち上がり、慌てて落ちたものを拾おうとするが、何個かはホームから線路へと落ちていった。

「あの子何してんだ?」

 トニーが側で声を出したとき、ジョーイの足元に丸いものが転がってきた。
 ジョーイはそれを拾い上げ、まじまじと見つめた。

「おい、なんだそれは?」

 トニーが覗き込むとジョーイは「ビー玉」と呟いた。

 ジョーイは指でビー玉をつまみながら、必死にビー玉を拾い集めている女の子を暫く見ていた。

 その子は黒く丸みを帯びたフレームのダサい眼鏡を掛け、セミロングの少し赤みがかった髪を後ろで一つに束ねて、とても地味な生徒に見えた。

 だが顔の造りはそうではなかった。

 眼鏡が邪魔をしていなかったら、かわいい女の子だと目立つ顔立ちだった。
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