ロストマーブルズ
「ジョーイさん、さっきの男と何を話してたの? あの人は誰?」

「リルはそんなこと何も知らなくていい。それよりも巻き込んでしまってすまなかった。もう俺には関わらない方がいい」

「私なら大丈夫。もし何か役に立つことがあるならお手伝いしたい」

「だめだ、もし君に何かあったら、俺、責任とれない」

「そんなこと私全然気にしてない。それよりジョーイさんがあの時のお兄ちゃんみたいに突然姿を消すとかなったら私、そんなの嫌!」

 リルは過去の事故のトラウマから、慕っていた友達を失くした辛さが蘇り、感極まって突然ジョーイに抱きついた。

「おい、リル」

 ジョーイは顔を顰めるも、最後は諦め、リルに抱きつかれるままになっていた。

 夜の桜は威厳満ちて、怪しげに浮かんで見える。
 人々はそれらを眺めて楽しみ、ひっきりなしに人が川のように流れている。
 そこにポツンと杭が立ったようにジョーイはリルに抱きつかれながら、周りの光景を目に映していた。
 ジョーイの力ないその体の意味を感じ取った時、リルはようやく我に返った。

「ご、ごめんなさい。私、つい」
「もういい。リルは過去の辛い記憶に振り回されているだけだ」

 リルは下を向いたまま、何も答えなかった。
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