ロストマーブルズ

 ホームに続く階段を下りれば、電車が入ってきたところだった。
 ジョーイはぴったりキノの側について、電車に乗り込んだ。

 座席が空いているのにキノは座らず、出入り口のドアの前に立つ。
 ジョーイももちろんそうした。

 電車がゆっくりと動き出し、外の景色が徐々に流れていく
 勢いでついてきたとはいえ、これといった話題もなく何も話せずじまいだった。

 キノももじもじしながら、時々ジョーイを気にしつつ、愛想笑いをしては誤魔化し、その場を繋いでいる様子だった。

 意識をしすぎて、二人はぎこちなくなっている。

 二人の距離はかなり近いのに、どこかで線を引き、それ以上入り込めないでいた。

 このままでは一緒に帰っている意味がないと、ジョーイは無難な質問をしてみた。

「キノの趣味はなんだい?」
「えっ? 趣味?」

 聞き返されたとき、思わず失敗したとジョーイは少し眉を顰めて後悔してしまう。

 唐突な質問だっただろうかと、うろたえてしまった。
 キノは空気を読んだように慌てて答えを返す。

「えっと、本を読むことかな。あとはツクモの世話も趣味に入る?」

「えっ、ああそうか。じゃあどんな本が好きなんだ」

「ミステリーが好き。誰が犯人とかトリックの技巧とか最後を読むまでに自分で推理するのが好き」

「それは俺も同じだ。いつも犯人はコイツだなって思ったら大体当たってる」

 共通の話題が出てきたのでジョーイは調子付いてきた。
 そしてその後はどんなミステリーを読んだのかと徐々に盛り上がってくる。
 キノがまだ読んでいない話のあらすじをジョーイが教えてやると、ネタバレするからと耳を塞ぐしぐさまでしていた。
< 156 / 320 >

この作品をシェア

pagetop