ロストマーブルズ
 三人はハンバーガーショップで。それぞれ注文したものを目の前にしてテーブルについていた。

 壁際の4人掛けのテーブルにキノと詩織が隣同士になり、その前にジョーイが座る。

 詩織はキノの世話をするかのように色々とお節介をやいている。

 キノの髪を撫ぜては、髪型のアドバイスをしたり、眼鏡からコンタクトに変えろやら、頬が柔らかいと何度も突付いてはかわいいとまるで玩具のような扱いだった。

 キノは何も言えずされるがままで、時折笑顔だけは見せていたが、どこか無理をしているような感じだった。

「詩織、いい加減にしたらどうだ。キノが嫌がってるぞ」

「だって、キノちゃんかわいくてもう放っておけないんだもん。なんでこんなにかわいく生まれたの。ジョーイもかっこいいけど、やっぱりハーフっていいな」

 おめでたい詩織の発言に呆れ、ジョーイは口元にハンバーガーを持ってきては、感情をぶつけるようにがぶりと食いついた。

 この風貌が如何に素晴らしいかと詩織は思っているが、少なくともジョーイはじろじろ見られることを腹立たしく思っている。

 詩織には何を言っても無駄だとばかりに、ひたすら黙々と食べることだけに専念した。

「私は詩織さんの美しさに憧れる。詩織さんは神から与えられた真の美しさだと思う」

 手に持っていた食べかけのハンバーガーをトレイに置いてキノは俯いた。

 肩が微かに動き、感情を必死に堪えているようなキノの姿が意外で、ジョーイはそこに自分と同じコンプレックスを持っているのではないかと感じてしまった。
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