ロストマーブルズ
『I lost my marbles』
『アハハハ、それって気が狂ったっていう意味にもなるんだよ』


 デジャブーを感じた時のように脳がもっと思い出せと刺激する。

 ──あの時、俺はアスカと話していたんだ。

 無意識にその記憶を呼び覚まそうとしたとき、トニーがジョーイに手招きする。

「ジョーイ、お前もそれ、この子に返してやれよ」

 手に持っていたビー玉をジョーイは見つめた。別になんの変哲もない普通のビー玉。
 中に黄色い模様がうねる様にして入っている。

 ジョーイはそれを持って女の子に近づいて、女の子が手にしていた四角い赤い缶の中にビー玉を落としてやった。

「あ、ありがとう」

 女の子は自分の失態を見せたことが恥ずかしいのか、かっこいいジョーイが近づいてきたことに恥じらいをもったのか、この上なくあたふたとしている。

 そして眼鏡の奥の瞳はジョーイをしっかりと一瞬捉え、そして見つめてはいけないかのように目をすぐに逸らした。
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