ロストマーブルズ
第七章 見えてきた変化

「さてと、今日はいろんなこと聞かなくっちゃ」

 白衣の袖を捲り上げるしぐさをすると、早川真須美は少し意地悪っぽい笑みを浮かべて、簡易ベッドの上で横になっているジョーイを見下ろした。

 ジョーイは根掘り葉掘り聞かれる覚悟をしていたが、どうも早川真須美は仕事の域を超えて、興味で動いているように思えてならない。

「先生、これも治療の一環ですよね」

「もちろん! といいたけど、ジョーイの場合特別な患者さんだから、色々と好奇心もうずくわね。特にあのリルちゃんって女の子との関係は知りたいわ」

「だから、それはただの友達で、あの時は偶然に出会っただけだってば」

 偶然に出会ったと言ってみたものの、リルをあそこに向かわせた奴は確かに存在する。

 ジョーイは、改めて不可解になってきた。

 ジョーイが夜桜祭りに呼び出され、チンピラに絡まれたのは誰かによって意図的に計画されたと確信を持って言い切れる。

 その主犯者がギーということは分かっているが、リルはまた違う存在の者から呼び出されていた可能性が高い。

 その証拠に、ギーは計画が狂ったと言っていた。

 だが、それの持つ意味や目的がわからない。

 一体何が起こっているのだろうか。

 その一瞬の心のわだかまりを持ったジョーイの表情を、早川真須美は見逃さなかった。
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