ロストマーブルズ
「ねぇ、正直に答えて。最近何か変わったことがなかった? 過去のことを含めて、それを呼び起こさせる出来事、または何かそういう関係する人物との接触があったとか」

 さすがに鋭い指摘に、ポーカーフェイスが得意のジョーイも心が乱された。

 キノが駅でビー玉を転がした場面に遭遇してから、確かに過去の記憶が呼び起こされた。

 自分も転がったビー玉になったようにずっと転がり続け、何かに触れると次の仕掛けが作動するようにスイッチが入り、新たな事に繋がっていく。

 めまぐるしく自分の周りが変化している。

 そしてギーというFBI捜査官との接触から、急激に危険が伴うようなことまで発展してしまった。

 これが一体何を意味しているのか、ジョーイ自身困惑しているが、それを正直に早川真須美に言う気分になれなかった。

 早川真須美が信用置けないというのではなく、自分で解決しなければならない使命感とでも言うべき感情が湧いていた。

「ジョーイ。何か隠しているでしょ。私に嘘をついてもだめよ」

 早川真須美の目が一層細まり厳しくなった。

「先生、別に嘘をつくつもりはありません。ただ今はまだ自分でもはっきりしないだけで、何を話していいのかわからない。確かに何か変わったって感じるけど、俺が話したくなるまで待って欲しい」

「ジョーイ、それじゃ私の仕事にならないじゃない。ここに来る意味がなくなっちゃうわよ」

「俺だって、こういうことは最初から続けたくはなかった。でも母親がうるさくて、無理に通ってるだけに過ぎない。俺は別に今のままでもいいと思っている。普通と違ってももう平気だ。見かけも充分普通じゃないしね」

「そこまで頑なに言われたら仕方ないわね。でもジョーイ、普通と違うって事に本当に平気なのね」

 早川真須美は一番大事なことのようにその部分を繰り返した。
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