ロストマーブルズ
「あっ、ビー玉好きなんです。さっき駅前の雑貨屋でこれが売ってたのでつい衝動買いしちゃって。中が気になって開けたらあんなことに」

「いくつか減っちまったな」

「全部失くしたわけじゃないから大丈夫です。それにジョーイも一つ見つけてくれた」

 ここでキノに名前を呼ばれてジョーイははっとした。
 さっきトニーが名前を知らせたとはいえ、その呼び方が昔から自分のことを知っているように聞こえたからだった。

「もしかして俺のこと知ってるのか?」

 ジョーイは聞かずにはいられなかった。
 ビー玉のことといい、昔の記憶が刺激されて何かが飛び出しそうだった。

「えっ? いいえ、今日初めて会いました。それに私まだこっちに引っ越して来たばかりで、この辺のことよくわからないんです」

「みたところ、ピカピカの高校一年生って感じだな。それにあんた日本育ちじゃないね。今までどこで住んでたんだい?」

 トニーが口を挟んだ。

 その時、電車の到着を知らせるアナウンスと共に、注意を引く音が流れてきた。
 それにかき消されるようにトニーの質問はぶった切れた。
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