ロストマーブルズ
 また空に抜けるようにカキーンと音がすると、キノは試合にのめりこんで聡を応援し始めた。

 そして一回の裏は二点入り、聡のチームは益々活気付いてきた。

 野球の試合は応援したい人がプレイしていると、少し力が入ってくる。
 例えそれがバーカとかつて罵られた相手であっても、一生懸命の姿を見せられると応援せずにはいられなかった。

 試合に熱中しながら、キノが用意してくれたお弁当をすっかり平らげて、ジョーイのお腹も満足だった。

 ずっと気になっていたキノをまじかにして一緒に過ごしていると、夢を見ているような錯覚を覚える。

 一体自分はキノの何が知りたかったのだろうか。

 ふと冷静になると、そこにはなんの答えも見つからないことに気がついた。

 勝手にアスカをイメージして、キノの不思議な行動がたまたま自分の記憶を刺激し、もしやという期待を抱かせたに過ぎなかった。

 ジョーイは無邪気に応援しているキノの姿をじっと見つめていると、自然と笑顔になっていた。

(俺、今笑ってるな)

 しっかりと自分でも自覚していた。
 きっかけはなんであれ、ジョーイの中にキノが入り込み、そして初めて女の子に興味を持ったと認めた。

 そんな思いでジョーイがキノを見つめていると、キノが視線を感じて振り返り、ばちっと目が合ってしまった。

 お互いはっとしてまた目を逸らしながらも、どこか落ち着かずにそわそわする。

 だけどそれが、なんだかジョーイには、心を刺激されたようにドキドキして悪くなかった。
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