ロストマーブルズ
 電車がホームに入りドアが開くと、三人は同じ車両に乗り込むが、車内は比較的空いているにも関わらず、キノは一礼をすると一緒にいるのが気まずいかのように、二人から離れて前の車両に行ってしまった。

「あーあ、どうやら俺たち嫌われたみたいだぜ。なんかショックだな」

 トニーがありえないとばかりに、目の前の空いている席にドシンと腰をかけた。
 その前にジョーイが立った。

「お前が変な失礼なこと聞くからだよ。でもどうしてあの子が日本育ちじゃないってわかったんだい」

「ジョーイの名前を呼び捨てにしたからさ。日本で育ってれば呼び捨てに抵抗があって”さん”とかつけるだろ。それなのにキノは前からジョーイのことを知ってるかのように聞こえたんだ。お前もそう感じたから自分のこと知ってるのかって聞いたんだろ」

 トニーの指摘にジョーイは言葉を失った。

 トニーにも同じように聞こえていたことが、さらに不思議な感覚を呼び起こす。

 つり革を強く握っては、窓の移り変わる景色を目に映して、瞳孔だけが小刻みに揺れるように動いていた。

 トニーはジョーイが黙り込んだことで、何事もなかったように鞄から携帯を取り出し、メールをチェックすると忙しく親指が動きだした。

 また女の子にメールを入れていると、ジョーイは呆れ顔になった。

 トニーが暫くメールに集中していることをいいことに、ふとキノを探すように連結部分のドアを通じてジョーイは前の車両を見つめる。

 こちらに背を向け、扉附近に立つキノが目に入った。
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