ロストマーブルズ
 シアーズは返事に困り、代わりにため息を吐いた。
 キノの一歩も引かない意気込みに、シアーズも負かされていた。

 それに押されて、その気持ちを汲み取ってやりたくなる。
 自分が係わってきたことに対しての罪滅ぼしもあったのかもしれない。

 しかしそれがもっと危険な道へと進んでしまうとわかっているだけに、はっきりとは言えなかった。

 あくまでも曖昧に、シアーズらしからぬ弥縫策を講じる。

「(キノ、いつでも去れる準備をしておくんだ。その覚悟で一日一日を大切に過ごすことだ。私が次に帰れと命令した時は逆らえないことを覚えておきなさい)」

「(それじゃ、あと少しここに居てもいいんですか)」

「(キノが思っているあと少しとはどれくらいの期間を意味しているのかは私には分からないが、それはキノ次第ということだ)」

「(はい)」

 滞在期間が延びたとはいえ、キノは素直に喜べなかった。確実にジョーイとは離れなくてはならない。

 キノはそのために自分が何をすべきかもう答えを出していた。
 アスカのためにも──

 そしてそれが折角許可してもらえた滞在期間を更に短くすることになると思いつつ、それでもすでに覚悟を決めていた。
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