ロストマーブルズ

 キノと別れ、家に戻ってきたジョーイは、玄関ドアの前で少し戸惑っていた。

 前夜は仲直りできずに、トニーはそのまま寝てしまい、朝も結局は顔を合わさずに家を出てきた。

 このときトニーと顔を合わせたらどんな顔をしていいのか、何を話していいのかわからない。

 ぎこちない態度を取るのも嫌で、家に入るのを躊躇している。
 一番良い対策は何かと考えたら、自分が謝ることが最良の策だった。

 そんな策を思いつくのも、ジョーイの機嫌がよかったからかもしれない。
 しかし、確実に心はほぐされていた。

 普段のジョーイならとことん意地を張り続け、仏頂面まっしぐらだっただろう。

 これもキノと過ごした影響だった。

 ジョーイは覚悟を決めて、鍵を突っ込み、勢い良く回す。
 ドアノブに手をかけ、ゆっくり回した後は、息を止めてぐっと引っ張った。

「ただいま」

 二階にも届く声で叫んでみたが、家の中は静まり返っている。
 自分の声だけが虚しく響いた。
 足元を見れば、トニーのスニーカーがない。

「なんだ、あいつ出かけているのか」
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