ロストマーブルズ
 肩に掛けていた鞄から紐がついた何かを取り出し、耳の辺りに触れる仕草をしている。

 音楽を聴き始めたようだ。

 何を聴いているのだろうか、とジョーイは他愛無い疑問を抱く。

 そうやって暫く観察してると、覗き見しているような気分になっていった。

「キノか……」

 小さく呟いた時、何事にも無関心だったはずだったのにと、ジョーイ自身はっとさせられた。

 そして電車が大幅に揺れたとき、ビー玉が一つ不自然にコロコロと車内を転がっているのが目に入る。

「あいつまた落していったのか」

 そのビー玉はジョーイの元へと、まるで引き寄せられるように転がり、拾わずにはいられない。

 だが手にした時、それをキノのところにまでもって行くか迷っていた。
< 20 / 320 >

この作品をシェア

pagetop